「家賃タダ」なのに、なぜ韓国の若者は絶望するのか
ソウル市内のカフェで、28歳の会社員ジヒョンさんがため息をついた。

「自立?無理ですよ。チョンセ資金すら用意できないのに」
月収300万ウォン(約35万円)の彼女。日本なら十分に一人暮らしができる収入だ。でも韓国では「家を借りる」ことすら、途方もない挑戦になる。
その理由が、韓国独特の賃貸システム「チョンセ(전세)」だ。
衝撃!家賃0円の代わりに2億円を大家に預ける!?
チョンセを一言で説明すると「家賃なしで住める代わりに、巨額の保証金を大家に預ける」システム。
具体的な数字を見てみよう:
- ソウルの平均的なマンション(25坪)のチョンセ金:約5億ウォン(約5,800万円)
- 江南エリアなら:10億ウォン(約1億1,600万円)以上も珍しくない

「え?それって購入じゃなくて賃貸の話?」と思ったあなた。
そう、賃貸の話だ。
なぜこんな制度が生まれたのか?驚きの歴史
実はチョンセ制度、1960年代の韓国の「ある事情」から生まれた。
当時の韓国は:
- 銀行の住宅ローンがほぼ存在しない
- 金利が年20%を超える高金利時代
- でも経済は急成長中
そこで大家たちは考えた。
例えば1億円を年利15%で運用すれば、年間1,500万円の利益。月125万円の家賃収入に相当する。しかも税金もかからない。
これが「韓国式錬金術」の始まりだった。
チョンセが作り出した「階級社会」の実態
しかし、この制度が韓国社会に深刻な格差を生み出している。
持つ者と持たざる者の決定的な違い
チョンセ金を用意できる人
- 親からの援助がある
- すでに不動産を所有している
- 高収入のエリート
チョンセ金を用意できない人
- 地方出身者
- 一般的なサラリーマン
- 若い世代
韓国の平均初任給は約250万ウォン(約29万円)。5億ウォンのチョンセ金を貯めるには、一切使わずに16年以上かかる計算だ。

「チョンセ難民」たちの悲痛な叫び
SNSには日々、こんな投稿があふれている:

30歳、貯金8,000万ウォン。チョンセどころか半チョンセも無理。一生実家暮らしかな。

チョンセローン金利が7%超え。もう月賃(ウォルセ)の方が安い。

結婚3年目。チョンセ更新で1億ウォン値上げ要求された。離婚を考えてる
韓国政府も認めた「時限爆弾」チョンセの恐怖
2022年、韓国で起きた「ヴィラ王事件」を知っているだろうか。
「ヴィラ王」と呼ばれた不動産業者が、1,000戸以上の物件でチョンセ詐欺を働き、被害総額は1兆ウォン(約1,160億円)を超えた。
なぜこんな詐欺が可能だったのか?
チョンセ制度の「致命的な欠陥」がここにある:
- 大家がチョンセ金を使い込んでも罰則がない
- 不動産価格が下落すると、チョンセ金が返ってこない
- 大家が破産したら、借主は家も金も失う
実際、2023年だけで「チョンセ金未返還」による被害件数は3万件を超えたという。

家を借りたことで、逆に路頭に迷うことになった被害者たち。
それでも韓国人がチョンセを選ぶ「切実な理由」
これだけリスクがあるのに、なぜ韓国人はチョンセを選ぶのか?
理由1:「家賃を払う」ことへの強烈な抵抗感
韓国では「家賃=捨て金」という考えが根強い。

毎月50万ウォン払って何も残らないなんて、お金をドブに捨てるようなもの
この考え方の背景には、韓国特有の事情がある。
韓国人が家賃を嫌う理由
- 親世代は高度成長期に不動産で資産を築いた
- 「賃貸=負け組」という社会的偏見
- 月々の支払いより、まとまった資産として見える方を好む文化
しかし皮肉なことに、チョンセローンの金利を払う方が、普通に家賃を払うより高くつくケースも増えている。それでも「家賃を払わない」というプライドのために、より多くの利息を払う。
この矛盾に、韓国社会の見栄と現実のギャップが凝縮されている。
理由2:「不動産階段」という幻想への執着
韓国には「不動産階段」という言葉がある。これは段階的に住居をグレードアップしていく人生設計のことだ。
理想のシナリオ
- ワンルーム月賃からスタート
- お金を貯めてチョンセへ
- チョンセで家賃分を貯金
- マイホーム購入
しかし、現実は全く違う。
実際のシナリオ
- チョンセ金が高すぎて月賃から抜け出せない
- やっとチョンセに入っても、更新時に値上げされる
- チョンセローンの返済で貯金どころではない
- マイホームなんて、夢のまた夢
それでもこの「不動産階段」神話が根強いのは、韓国社会で「家を所有すること」が成功の絶対的な基準とされてきたからだ。親世代が不動産で財を成した成功体験が、今も若者を苦しめている。
理由3:社会的プレッシャー
「ウォルセ(月賃)に住んでる」と言うと、周囲から「お金がない人」扱いされる現実がある。
実際にあった韓国人の体験談

お見合いの席で『今どこに住んでいますか?』と聞かれて『江南でウォルセです』と答えたら、相手の親の顔色が変わった。
年収は悪くないのに、『チョンセもできない男』というレッテルを貼られた。

会社の同僚との飲み会で住まいの話になり、『私はウォルセ』と言ったら微妙な空気に。
後で先輩から『そういうことは言わない方がいい』とアドバイスされた。
韓国の住居ヒエラルキー
- 自己所有マンション(最上位)
- チョンセ(まあまあ)
- 半チョンセ(ギリギリセーフ)
- ウォルセ(底辺扱い)
この見えない階級制度が、若者を無理なチョンセローンに追い込む。SNSでは「#チョンセ自慢」の投稿が溢れ、住んでいる地域とチョンセ金額でマウントを取り合う現象まで起きている。
経済的に合理的でも、社会的に「負け組」と見なされる。この息苦しさが、韓国の若者を追い詰めている。
革命前夜?変わり始めた韓国の住宅事情
しかし2024年、潮目が変わり始めた。
MZ世代が起こす「住宅革命」
従来の価値観
- チョンセ>半チョンセ>ウォルセ(月賃)
- 大きい家>小さい家
- 所有>賃貸
MZ世代の新しい価値観
- 立地>広さ
- 柔軟性>安定性
- 経験>所有
最近の調査では、20代の約6割が「チョンセより月賃を選ぶ」と回答。5億ウォンという巨額の借金を背負うより、月々の家賃を払いながら残りの資金を投資や自己実現に使いたいという声が増えている。
「家に縛られたくない」「いつでも引っ越せる自由が欲しい」という価値観の変化が、韓国の住宅市場を揺るがし始めた。

新しい価値観で生き始めた韓国の若者たち。
政府も動き出した「脱チョンセ」政策
2024年、韓国政府はついに重い腰を上げた。
主な3つの政策
1. 青年月賃支援制度
34歳以下の若者に月20万ウォンの家賃補助。申請が殺到して抽選になったが、「焼け石に水」との声も。
2. チョンセ保証保険の義務化
大家の持ち逃げを防ぐため、高額チョンセには保険加入を義務化。ただし保険料を誰が負担するかで揉めている。
3. 公共賃貸住宅の大量供給
10年で100万戸を建設する野心的な計画。しかし「地価が下がる」と周辺住民から反対の声が。
なぜ今になって動き出したのか?
理由はシンプル。不動産価格が下がり始めて、チョンセ金を返せない大家が急増しているからだ。
大家の多くは、新しい入居者のチョンセ金で前の入居者に返金する「回転」で成り立っていた。でも不動産不況で新規入居者が見つからず、この回転が止まり始めている。政府はこれ以上被害が広がる前に、制度そのものを変えようとしているのだ。
チョンセ制度が映し出す韓国社会の本質
チョンセは単なる住宅制度ではない。
- 極端な競争主義
- 不動産への異常な執着
- 世代間格差
- 「見栄」の文化
これらすべてが凝縮された「韓国の縮図」なのだ。

不動産をめぐる日韓共通の闇
チョンセという極端な制度を見ると、日本の賃貸制度がマシに見えるかもしれない。
しかし、不動産業界の不透明さや、庶民が搾取される構造は日韓共通の問題だ。
日本には以下のような問題がある:
- 礼金という返ってこない謎のお金
- 更新料という名の定期的な搾取
- 実際にはやってない「害虫駆除費」「室内消毒費」
- 鍵交換費2万円(自分でやれば5000円で済む)
- 退去時の原状回復費用でぼったくられる
- 勝手に加入させられる「24時間安心サポート」的なサービス
- 指定された割高な火災保険への強制加入
- 退去時の「クリーニング費用」という名の二重取り
- 保証会社の理不尽な審査と高額な保証料
挙げていけばキリがないが、要は韓国のチョンセも、日本の敷金礼金も、結局は「持つ者」が「持たざる者」から搾取する仕組みだということ。
形は違えど、不動産を通じた格差の固定化という本質は変わらない。
おわりに:それでも韓国の若者は強い
最後に、冒頭のジヒョンさんの続きを紹介しよう。

「チョンセ?諦めました。その代わり、友達3人でシェアハウス始めたんです。家賃を割り勘して、浮いたお金で投資の勉強してます。いつか自分のカフェを開くのが夢なんです」
制度の壁にぶつかりながらも、新しい生き方を模索する韓国の若者たち。
チョンセという「過去の遺産」と決別し、自分たちの価値観で生きる道を選び始めた彼らの姿に、韓国社会の希望が見える。
あなたはどう思いますか?
もし韓国に住むとしたら、5億ウォン借金してチョンセ?それとも月賃で身軽に? コメントで教えてください!
※為替レート:1円=約8.6ウォン(2024年基準)で計算
借主から巨額の保証金を預かって、それを運用すれば家賃収入より儲かるじゃないか!