「教育虐待」と「学歴社会」の末路…受験戦争(スヌン)の過酷さと、その後の絶望的な就職難

0歳から始まる「終わらない戦争」

ソウル・大峙洞(テチドン)の塾街。深夜22時。
授業を終えた小中高生たちが、一斉にビルから吐き出され、親が運転する車に吸い込まれていく。

「あと4時間寝れば合格、5時間寝れば不合格」
これは、韓国の受験生の間で語り継がれる有名な言葉だ。

「息子には、私のような苦労をさせたくない…」
月収の半分を塾代に投じるキムさんは、疲れ果てた表情で語る。しかし、その「親の愛」が、時に子供を追い詰める凶器に変わる。

「教育虐待」という名の愛情

韓国では今、「教育虐待(교육학대)」という言葉が社会問題になっています。

~教育虐待とは?~
子供の許容範囲を超えて過度な勉強を強いたり、成績が悪いことを理由に人格を否定したりする行為。身体的な暴力だけでなく、精神的な追い込みも含まれます。

親たちは「すべてはあなたのため」と言いますが、実態は親の虚栄心や、階級転落への恐怖が子供を縛り付けているケースも少なくありません。

数字が物語る心の闇

  • 韓国の青少年の幸福度: OECD加盟国中で最下位圏を推移。
  • 自殺の原因: 10代の死因1位は長年「自殺」であり、その多くが成績や進路への悩み。
  • 家計を圧迫する教育費: 月平均の私教育費が過去最高を更新し続けている。出典:韓国統計庁「2023年 青少年統計」

韓国を狂わせる「スヌン(修能)」の正体

韓国の学歴社会の頂点にあるのが、大学修学能力試験、通称「スヌン(수능)」です。
毎年11月、この日は国全体が動きます。その異様な光景は、もはや一つの儀式です。

  • 空が止まる: 英語のリスニング試験中(約25分間)、騒音を防ぐため全土で飛行機の離着陸が禁止される。
  • 警察が出動: 遅刻しそうな受験生がいれば、白バイやパトカーがサイレンを鳴らして試験会場まで「緊急搬送」する。
  • 国がシフトする: 渋滞を避けるため、公務員や一般企業の始業時間が1時間遅らされ、証券取引所の開場時間まで変更される。
コリラボ編集長

試験一つで国全体がここまでやるなんて…まさに人生を懸けた「決戦の日」なんだね。

「四当五落」— 睡眠を捨てる子供たち

ここで先ほどの言葉に戻ります。「四当五落(サダンオラク)」

4時間睡眠なら合格し、5時間寝れば落ちる。この根性論が、21世紀の今もなお韓国の受験生を支配しています。

  • 深夜2時の自習室: 塾が終わった後、さらに2時まで運営される「プレミアム自習室」で、睡魔と闘いながら問題を解き続ける高校生たち。
  • カフェイン依存: 高濃度のエナジードリンクを飲み干し、意識を無理やり覚醒させて机に向かう。

このような極限状態を数年間続けることが、韓国では「当たり前の努力」とされています。

命を懸けた先に待つ「就職氷河期」

しかし、地獄のような受験戦争を勝ち抜き、名門「SKY」(ソウル大、高麗大、延世大)を卒業しても、バラ色の人生が待っているわけではありません。

残酷な就職データ

  • 大卒者の非正規雇用率: 過去最高水準を更新。名門大卒でも「インターン(見習い)」を転々とする若者が多い。
  • 大企業の求人倍率: サムスンなどの財閥系企業には、全国から数万人の応募が殺到し、倍率は数百倍に。
  • スペック競争の激化: 学歴だけでなく、語学スコア、ボランティア活動、資格、インターン歴…すべてが完璧でないと書類すら通らない。

せっかくエリート街道を歩んできたのに、出口(就職先)がない。これが今の韓国の若者が直面している、最も残酷な現実です。

コリラボ編集長

もはや勉強じゃなくて、命を懸けたサバイバルだよ……。

医大定員増員への反発:エリート層の焦り

最近、韓国の医療現場を麻痺させている「医学部定員の増員問題」も、この学歴社会の末路を象徴しています。

政府が医師不足解消のために医学部の定員を増やそうとしたところ、現役の医師や医大生が猛反発し、集団辞職や授業拒否に発展しました。

なぜ、彼らはここまで怒るのでしょうか?

  • 希少価値の崩壊: 「医者になれば一生安泰」という最後の聖域が、増員によって脅かされることへの恐怖。
  • 過剰な競争の副作用: 子供の頃から睡眠を削り、何年も浪人してようやく手に入れた「プラチナチケット(医大合格)」の価値を下げられたくないという心理。

引用:https://www.fnn.jp/articles/-/662176

これは単なる医療問題ではなく、「パイの奪い合い」が極限に達した社会の歪みなのです。

「n抛(エヌポ)世代」が選んだ静かな抵抗

「いくら頑張っても、これ以上は無理だ」

そう悟った若者たちは、何かを「抛(あきら)める」ことで自分を守り始めました
恋愛、結婚、出産だけでなく、今や人間関係やマイホーム、そして「夢」や「希望」までも。

これが「n抛(エヌポ)世代」の正体です。競争に勝てないなら、最初から参加しない。あるいは、最低限の生活で満足する。彼らにとって、それは「負け」ではなく、唯一の「生存戦略」なのです。

「もう本当に疲れた!#大韓民国 #ヘル朝鮮 その通りだ!」という韓国の若者の悲痛な叫び。

日本の私たちが学ぶべきこと

この韓国の姿は、決して他人事ではありません。

日本との共通点

  • 中学受験の低年齢化: 首都圏では「4年生(実質3年生の2月)から塾通い」が標準に。
  • 教育のコスパ悪化: 多額の教育費をかけても、将来の年収でそれを回収するのが難しくなっている。
  • 幸福感の欠如: 成績が良くても、自己肯定感が低い子供たちの増加。

日本のある塾の代表は、中学受験の低年齢化が進む現状について、こう警鐘を鳴らしています。

『うちの子はなんとか勝ち組に、少なくとも負け組にはならないでもらいたい』という保護者の脅迫観念が、子供の自尊心や主体性の芽を摘んでいないか(引用:究進塾ブログ

私たちは、自分たちの「将来への不安」を、子供の教育という形に変えて肩代わりさせてはいないでしょうか。

今、求められているのは、焦りから子供をリードし続けることではありません。
究進塾の並木代表が説くように、子供自身が自分の人生を歩み出す力を、親が「泰然自若」として信じ、見守ること。それこそが、日本と韓国のどちらにおいても、子供たちが「自分の人生」を取り戻すための、最初の一歩になるはずです。

コリラボ編集長

レールを敷く勇気よりも、レールから外れても大丈夫だと笑って見守る『親の勇気』こそが、今の時代に一番必要なのかもしれないね。

おわりに:幸せの定義を問い直す

「いい大学に入れば幸せになれる」というかつての正解は、今の韓国では崩壊しつつあります。

過酷な受験戦争を勝ち抜いたパクさんは、大手企業の内定を得た後にこう漏らしました。

「1等賞を目指して走り続けてきたけれど、ゴールについても誰も拍手してくれなかった。ただ次の、もっと過酷な競争が待っているだけだった」

本当の豊かさとは、学歴や年収の数字だけにあるのでしょうか?

韓国の「教育虐待」と「学歴社会」の末路は、私たちに「どう生きれば幸せなのか」という根源的な問いを突きつけています。

みなさんは、お子さんや自分自身の教育について、どう感じていますか?
「勉強より大切なことがある」と思いますか?それとも「やはり学歴は必要」だと思いますか?ぜひコメントで皆さんの考えを共有してください!

この記事の統計データは2023-2025年の韓国政府発表および主要メディアの報道に基づいています。

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